新・駅前そぞろ歩記

初午祭の賑わいにも美術館の庭にも――春の輝き
今回の登場人物
田沼(たぬま)

東武佐野線の「田沼」。日頃は静かな町ですが、今年の3月14・15・16日の3日間は「初午祭」で大賑わい。この旧暦で祝う「一瓶塚稲荷神社」の恒例行事には約300年の伝統があり、大勢の参詣者を集めます。特に今年は干支も午、福詣風景も活気に満ちています。また田沼は発見の多い町。例えば郊外に出て、安藤勇寿「少年の日」美術館を訪れてみましょう。里山の息吹きを呼吸しながら楽しむアートシーン。これもまた、春らしいひとときです。

田沼駅
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初午祭
待望の春が        “田沼初午祭(はつうまさい)”とともにやってきた。

旅情を誘うような小さな「田沼駅」。たとえ入口は狭くても、広大な佐野市の町ですから、その 魅力は深く広いのです。そうした歴史文化に触れるなら、駅の近くにある「たぬまふるさと館」を訪れてみましょう。伝統の鬼瓦と瓦屋根を活かしたモダンな建物が目印です。館内には、縄文時代に遡る遺跡の出土品や、現代に息づく特産品の数々が展示されていて興味深い。観光施設の紹介もありますから散策にも役立ちます。

次に向かった、初午祭が開催される「一瓶塚(いっぺいづか)稲荷神社」へは駅前から徒歩数分。といっても、それが初午祭の日だったら、駅から始まる人の流れに身を任せ、道路の両側いっぱいに軒を連ねる縁 日の露店や植木市を楽しんでいくうちに、気がつけば見事な大鳥居の前に出ているという感じです。この関東五社稲荷のひとつとされる神社の創始は1186年。当時、近郷近在の人びとが瓶かめに土を入れて運び、塚を築いたことが“一瓶塚”の名の由来になったそうですから、いかに尊崇されてきたかが分かります。本殿の精魂込めた彫刻は圧巻 で、境内の銅製鳥居は国指定重要美術品になっています。ちなみにこの駅前界隈は、地元の人おすすめの“旨いモノ屋さん”が多い場所。初午に欠かせない伝統菓子“しんこまんじゅう”は、田沼産の小豆と米粉に名水を用いたこだわりの味。総菜店の“名物・いもフライ”は、ポテトとソースの取り合わせが絶妙です。他にも昔ながらの手焼煎餅あり、老舗の蕎麦あり、レトロな食堂あり、という具合。日常の美味が気軽に堪能できました。

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 「少年の日」美術館
ちょっと郊外へ出て心の“ふるさと”に会いに行く。

町中もいいけれど、足を延ばせば里山風景に親しめるのも田沼散策の魅力。今回は安藤勇寿(ゆうじ) 「少年の日」美術館を訪れました。田沼駅前から市営バスに乗り約20分ほどですが、そこは広々と開かれた雑木林の中に佇む個人ミュージアム。児童画家・安藤勇寿さんの作品が常設展示されています。色鉛筆だけで描かれた作風は、繊細でいてダイナミック。誰もが心の片隅にもっている少年少女時代の心象風景を表現して、大切なことを思い出させてくれるよう――。今は特別展『海の風 山の風 川の風〈2〉』を開催しています。鑑賞後は広い庭に出て、里山観賞といきましょう。山からは春の芽吹きが訪れる時期。新緑や山桜の色も鮮やかで、すてきな午後が過ごせます。

伝統的な民俗文化に触れるなら、「氷川神社」へと向かいましょう。この由緒ある境内では、毎年11月23日に、「金谷の餅つき踊り」が奉納されるのです。その昔、悪竜を退治した坂上田村麻呂に捧げられた伝承の踊りは、実際に餅をつきながら舞い、ついた餅は見物客にふるまうというもの。踊り手の見事な杵さばきに心躍ります。

一方、美術館から見える「宇都宮神社」もまた面白い。そもそも“宇都宮”の名を冠した神社は数社ありますが、ここは地名から“御神楽(みかぐら)神社”とも呼ばれます。小さなお社は、1028年の創建と聞きました。注目は、その拝殿と本殿が大きな岩の上に鎮座して、京都の清水寺のように、崖を利用した舞台造りになっていること。時代を経た野趣豊かな表情は格別です。

さらに、ハイキングコースとしても有名な「唐沢山」も、これからは桜の季節を迎えます。千年 の時を偲ばせる「唐沢山城跡」や「唐沢山神社」…古跡巡りウォーキングに興味のある方は、ぜひコースのメインにしてください。物見櫓(ものみやぐら)があった「天狗岩」から展望する関東平野は、まさに絶景。田沼にはまさに、とっておきの春がきています。

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田沼MAP
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