新・駅前そぞろ歩記

五月晴れの水辺に薫風受けて泳ぐ鯉のぼり
今回の登場人物
新河岸(しんがし)

この春、東武野田線は「東武アーバンパークライン」という路線愛称名となりました。その名の通り、東京近郊の千葉・埼玉の都市間を結びながら、自然を感じられる公園が多く点在する路線です。
そして、運河駅も一新されました。昨年、新駅舎となって新たに東口が開設。東口から利根運河まで続く歩行者専用道路もできて「ムルデル記念通り」と名づけられました。ムルデルは利根運河を設計した人。利根運河を巡る歴史の散歩に出かけましょう。

運河駅
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利根運河交流館
日に100隻の船が航行した利根運河

昔、関東や東北から江戸へ物を運ぶには、船で利根川を上り江戸川を下っていました。利根運河 は、その運行ルートを短縮するために利根川と江戸川の間を掘った、全長約8.5kmの運河です。設計、監督はオランダ人技師ムルデル。延べ200万人以上の人手で工事を行い、明治23年に完成しました。最盛期には高瀬舟や蒸気船が一日100隻ほど航行。運河周辺は商店が並んで大変賑わったそうです。

航路としての役割は昭和初期に終わりましたが、利根運河はいまでは環境用水として公園の整備などが行われています。両岸を芝の広場に整備した運河水辺公園には、運河建設に貢献したムルデルを偲ぶ碑があります。この公園は水に親しみながら四季折々の自然を楽しむ憩いのスポット。5月には両岸にロープを渡して鯉のぼりを泳がせてい ます。題して「うんがいい!鯉のぼり」。また、毎月第4土曜日には、新鮮野菜や特産品など地元の店が出店する「うんがいい!朝市」を開催。これに合わせて野外コンサート「うんがいい!ライブ」も楽しめます。

運河水辺公園のそばに建つのは、利根運河交流館。利根運河の歴史や自然環境、ムルデルなどに関する資料を展示しています。また、ここではレンタサイクルが利用できます。利根川と江戸川を結ぶ利根運河の堤は、サイクリングロードになっています。運河に沿って自転車でゆっくり走れば、かつて船が航行していた時間感覚を味わえるかもしれません。

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東深井古墳の森
理窓会記念自然公園から東深井古墳の森へ

運河の北岸に広がるのは、東京理科大学のキャンパス。同学では創立100周年を記念して、隣接する広大な自然林に「理窓会記念自然公園」を開園。一般にも開放しています。池や雑木林、湧水など里山の原風景を残したような園内は、自然観察派にとって見どころいっぱい。ウグイスやカッコウなど、野鳥の鳴き声も聞こえてきます。

運河水辺公園からさらに下流へ行くと、明治創業の日本酒の酒蔵「窪田酒造」を発見。ここでは利根運河に吹く冷たい風を生かして、伝統的に日本酒やみりんを製造しています。流山は野田の醤油に対してみりんの町。江戸時代にこの地で初めて白みりんが造られたのです。今年は白みりん誕生200年なのだそうです。

蔵の近くには「利根運河大師堂」。利根運河を中心に「新四国八十八ヶ所利根運河霊場」が整備され、その札所は運河に沿った野田、流山、柏の3市に分布しています。運河の左岸側には駒形神社。境内に馬の像があるのは、かつてこの一帯に官営の野馬放牧場があり、良馬の産地だったことに由来するものです。運河の堤に沿って上流へ行くと「眺望の丘」。利根運河一番のビューポイントです。

そこから「運河散策の森」を進んでいくと、奥に広がるのが「東深井古墳の森」。6~7世紀に造られた群集墳で、かつては40基以上ありましたが、そのうち帆立貝形の前方後円墳1基と円墳11基が保存され、公園として整備されています。発掘調査では、出土した埴輪の種類が豊富で、千葉県内でも貴重な文化財として知られています。

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新河岸MAP
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