新・駅前そぞろ歩記

いっときの夏を惜しみ湿原や水辺に咲き競う尾瀬の花々
今回の登場人物
小村井・東あずま(おむらい・ひがしあずま)

東武スカイツリーラインの曳舟駅から天神さまの亀戸駅を結ぶ東武亀戸線は、明治37年に開業した歴史ある路線。その距離はわずか3・4キロで、途中の駅は小村井、東あずま、亀戸水神の3駅です。墨田区の住宅街をとことこ走る列車は、短い2両編成で可愛らしく往復します。いわば東京下町の愛すべきローカル線。今回そぞろ歩くのは、その中の小村井駅と東あずま駅の界隈です。小さな発見が楽しみですね。

小村井・東あずま
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小村井・東あずま
広重が描いた墨田の町並みを歩く

小村井駅の改札を出ると、そこはクルマが行き交う賑やかな明治通り。でも、ちょっと脇道に入っていくと、表通りの喧噪とは違った下町の穏やかな風景が広がっています。まずは小村井の鎮守さま「香取神社」へご挨拶。じつは北きた十じっ間けん川がわを渡った亀戸に亀戸香取神社があるので、こちらの方は小村井香取神社と呼ばれています。平安時代末期に千葉県香取郡から移住してこの地を開拓した人々によって、香取神宮を分社して氏神として創建したといわれています。

その香取神社の隣には歌川広重の『絵本江戸土産』に登場した名所「小村井梅園」があったのですが、明治の水害で惜しくも廃園。平成になって香取神社の境内に85種の梅を集めた「香梅園」として復活させています。

香取神社から「曳舟たから通り」に入ると、現れたのは「緑と花の学習園」。園内には約280種類5100本の植物が植栽され、花壇では季節の花々が四季折々の彩りを添え、潤いと安らぎを与えてくれます。また、毎週土曜日には樹木医やグリーンアドバイザーによる緑化相談を行っています。この辺りは住宅街と町工場などの中小企業が共存して暮らす東京下町らしい町並みですが、そこにこんな緑の空間もあるのが素敵。この通りには噴水が涼やかな「あずま百樹園」もあります。

小村井駅前から明治通りを南下すると「吾嬬(あづま)神社」。日本武尊(やまとたけるのみこと)の東征に縁起を持つ古刹ですが、ここもまた広重の浮世絵に多く取り上げられ、境内は「吾嬬の森」として知られていたそうです。

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平井街道を辿って立花大正民家園へ
平井街道を辿って立花大正民家園へ

吾嬬神社の北東に位置するのは「東あずま駅」です。駅のすぐそばには「東あずま公園」。墨田区立公園の中では比較的広く、豊かな緑の樹々の中にのびのび遊べる広場があって、地元の子どもたちから大人まで親しまれています。

東あずま駅前を東西に延びている道路は、江戸期には吾妻橋から平井聖しょう天でんに通じる平井街道でした。東あずま駅もかつて「平井街道駅」だった時代があります。この道を東に歩いて行くと、町の一角にひっそりと佇む小さな鳥居と祠ほこらを発見。「大井戸稲荷」です。ここにはかつて井戸があり、平井街道を行く旅人がひと休みして喉を潤したことから「人助けの稲荷」と呼ばれていたそうです。

さらに進むと旧中川に出ます。水辺は綺麗に緑が植樹され、川に沿って気持ちよく散歩できる遊歩道もあります。

この堤に面した敷地に保存されているのは「立花大正民家園 旧小山家住宅」。大正6年建築の木造民家で、関東大震災に耐え、東京大空襲の災害も免れ、建材からガラスまで昔のまま残る貴重な文化財です。造りは近郊農家と江戸の町屋的な雰囲気を併せもっていて、中に佇むと当時のこの地域の暮らしの温もりが感じられます。また、よく手入れされている庭には、七福神の石像が配置され、これもまた土地柄を偲ばせています。

同じく旧中川のそばに「白髭(しらひげ)神社」があります。かつてここが葛西川村だったころの鎮守社で、社殿の左手奥に建つ花崗岩の鳥居は、安永年間に建立されたもの。墨田区で最古の鳥居のひとつです。

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小村井・東あずまMAP
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