新・駅前そぞろ歩記

玉淀~寄居
水玉が澄みゆく季節に 名水の里を歩く

寄居町は、秩父の山中から染み出した水が集まって風布川(ふうっぷがわ)の流れとなり、荒川に合流して関東平野に流れ出す扇状地に発達した、山美しく水清らかな町です。水に関しては風布川・日本水(やまとみず)が「名水百選」(環境)に、町全域が「水の郷」(国土交通省)に、日本水の森が「水源の森百選」(林野庁)に認定されており、「水の三冠王」とも呼ばれているそうです。その山里に、北条氏ゆかりの歴史の舞台を訪ねてみました。

玉淀~寄居
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玉淀~寄居
城跡に刻まれた戦国の世の時をたどる

玉淀駅に着いたら、まずは荒川の河畔に建つ玉淀水天宮にご挨拶。モミジが植えられた境内にひっそりと鎮座する小さな神社ですが、夏に催される水天宮祭は「関東一の水祭り」といわれるほど賑わいます。

そのまま荒川に沿って上流へ歩いていくと雀宮(すずめのみや)公園。じつはここは七代目松本幸四郎別邸跡。玉淀の自然豊かな景観を愛した幸四郎丈は大正2年にこの地に別邸を新築し、「雀亭(すずめてい)」と称して安らぎの湯として過ごしたとか。現在はハイカーや地元の人の憩いの場となるように整備中。紅葉の穴場でもあります。

正喜(しょうきばし)を渡って荒川の対岸へ。橋の上から眺める荒川と鉄橋を渡る東武電車、その向こうに連なる山々は絶景です。

荒川沿いの断崖上にある鉢形(はちがた)は国指定史跡で、石積みの土塁や門、池などを復元し、公園として整備されています。関東屈指の名城といわれた鉢形城には戦国時代、さまざまな武将の歴史が刻まれています。末期は小田原北条氏の北関東進出の拠点として、城主・北条氏邦(うじくに)が上杉謙信や武田信玄らの攻撃を跳ね返しましたが、最後は豊臣旗下の大軍勢に包囲されて籠城。氏邦は城兵の助命を条件に降伏したそうです。さらに詳しく学ぶなら、公園内の鉢形城歴史館がおすすめです。

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玉淀~寄居
玉のように美しい水の淀み

鉢形城歴史館では、鉢形城の歴史や構造を映像などを交えて分かりやすく紹介しています。城跡では発掘調査が行われていますが、その出土品も展示。ガラスケースに展示されているかわらけ(素焼きの杯)を見ると、「ひょっとして氏邦が家来と酒を酌み交わしたものかも……」とロマンをかき立てられます。

さて、再び正喜橋を渡って荒川沿いを上流に向かって歩くと、玉淀河原入口へ。「玉のように美しい水の淀み」といわれることから命名された名勝で、水遊びやバーベキュー、釣りをする人などで賑わいます。

玉淀河原入口近く、石畳風の道にはカラフルなデザインのマンホール蓋。寄居町のほか小田原市、八王子市のもあります。じつはこの3市町は氏邦・氏政(うじまさ)・氏照(うじてる)の「北条三兄弟」ゆかりの地ということで姉妹都市盟約を締結。3市町のマンホール蓋を相互に交換して、それぞれの町に設置しているのです。

玉淀河原からさらに上流に向かうと宗像(むなかた)神社。荒川の洪水を沈め、船の交通を護るため九州の宗像大社から勧請(かんじょう)したもので、北条氏の信仰も厚かった由。いまは寄居の鎮守です。

名水の里歩きのゴールは寄居駅。東武東上線の始発・終着駅であるほか、JR八高線、秩父鉄道の駅でもあります。

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玉淀~寄居MAP
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