新・駅前そぞろ歩記

あじさいの花に彩られ景色も気分も“天下太平”
今回の登場人物
新大平下(しんおおひらした)

東武日光線の「新大平下駅」に佇たたずむと、まず遠くに見えるのが「太平山(おおひらさん)」。そのきれいな姿に、思わず登ってみたいなという気になります。特に6月は、あじさいの花咲き乱れる時。「太平山神社」に向かう「あじさい坂」では、“とちぎあじさいまつり”も開催中。さらに山麓の「大中寺(だいちゅうじ)」「清水寺(せいすいじ)」へと、あじさい散策の道は続きます。もちろん、絶景で知られる「謙信平(けんしんだいら)」からの展望も見逃せない。山と裾野に広がる町は、穏やかな心地よさに充ちています。

新大平下駅
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連祥院
行く人も“あじさい色”に染まりそう。謙信平の絶景にも息を呑む。

あじさい散策の出発点となるのが、太平山県立自然公園にある「連祥院(れんしょういん)六角堂」。ここから「随神門(ずいしんもん)」に至る約1000段も続く石段が「あじさい坂」。参道の左右には、およそ2500株もの花が咲き乱れているのです。ヤマアジサイ、セイヨウアジサイ、ガクアジサイなど品種も様々。その微妙に変わる色と風情は圧巻です。

ちなみに連祥院六角堂は、もともと太平山神社とともに創建された別当寺院。その名の通り不思議なフォルムを描きだす屋根が見事です。また、随神門は、八代将軍吉宗公の時代に建てられたといわれる太平山神社の神門です。正面に左大臣・右大臣、後ろには仁王の木像を配し、天井には龍が描かれています。歴史に磨かれた細部まで鑑賞したい人は、ここらで一休みといきましょう。

この門前のなだらかな山道を進むと、やがて視界が開けて――あの「謙信平」が現れます。かつて訪れた上杉謙信が、ここからの展望の素晴らしさに感嘆したという故事から、この名前がつきました。いまでも眼下に広がる関東平野は絶景。空気の澄んだ日は、遠く富士山や東京スカイツリー®まで望め、下界に霧がたちこめた日には、点在する高地が海に浮かぶ島のようになることから“陸の松島”とも呼ばれます。「山本有三文学碑」を発見したり、賑わう茶屋で名物の玉子焼きや蕎麦を賞味したり、のどかなひとときが過ごせます。

そして登れば「太平山神社」。昔からこの山を象徴する社だけに、随神門から急な石段を登っても、山道を遠回りしてもたどり着きます。

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太平山神社
山麓に点在するお楽しみスポットをハイキング。

太平山神社は、慈覚大師による創建(827年)以来、神々を祀る霊地として、天皇家・将軍家や万民の篤い信仰を集めてきました。長い歴史を物語るように、本殿を中心に数多くの神社が並びますから、まさに御利益の集大成。天下太平…どんな祈願もきっと叶えられるような気さえします。

一方、山麓に足を向ければ、まだまだ“あじさいポイント”がありました。たとえば、七色の花が迎える「大中寺」は、心も洗われるような古き禅寺。静寂に包まれた美しさは格別ですが、ここは、名作『雨月物語』の中に登場する「青頭巾(あおずきん)」の舞台ともなった寺。境内には説話に由来する“七不思議”の場所が残るなど、知る人ぞ知る興味深い名跡です。さらに地元でも評判の“あじさいの散歩道”をたどれば「清水寺」。こちらでは、“滝の観音”の名で参詣者を集めるご本尊・十一面千手観音のお姿に触れ、やはり心が動きます。

歴史に興味があれば、是非「栃木市おおひら歴史民俗資料館」を訪ねてください。国内最大級の舟形木棺をはじめ、縄文時代から近代までの貴重な資料を展示しています。隣接する「郷土資料館」では、江戸の大庄屋屋敷を保存。当時の生活文化が再現されています。

ところで、新大平下駅からの散策を充実させるなら、最初に駅東口の「プラッツおおひら」に是非――。旬の名産品と一緒に、旬の観光情報もゲットできます。近くに温浴施設もある市営の「ゆうゆうプラザ」があることも、ここで知りました。お陰様でひと汗流し、心身爽快な帰路につけました。

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新河岸MAP
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