新・駅前そぞろ歩記

東武宇都宮〜大谷町
東武宇都宮〜大谷町

「餃子のまち」「ジャズのまち」「カクテルのまち」……宇都宮の魅力を語るさまざまなキーワードがありますが、世界に誇る有名な石材・大谷石(おおやいし)もまた宇都宮に息づく歴史的な文化です。市街地から離れた大谷地区を中心に東西約4㎞、南北約6㎞にわたって採掘されてきたのは1500万年前の緑色凝灰岩(ぎょうかいがん)。その産地から大谷石と名付けられました。日本遺産にも認定された大谷石文化の聖地を訪ねてみました。

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東武宇都宮〜大谷町
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大谷地区に入ると、そこかしこに大谷石造りの蔵や住宅が建ち並んでいます。集落の奥に進むと、巨大な岩壁に囲まれた広場に大谷資料館の建物。この建物は資料館のほんの入り口に過ぎません。ここから地下への階段を下っていくと、大谷石の巨大空間が口を開けて待っているのです。

資料館の地下採掘場跡は約70年をかけて大谷石を掘り出して出来た地下空間。その広さは2万㎡(野球場一つ分)で最深部は地下60mに及びます。坑内は夏でも気温10℃前後。戦時中は地下の秘密工場、戦後は政府米の貯蔵庫として利用され、現在ではコンサートや美術展、映画のロケ地などにも利用され、注目を集めています。それにしてもこの地下空間は広く深く、神秘的で荘厳。掘削の線がくっきりライトアップされた壁が闇にそびえ立つ空間は、巨大な地下神殿です。

大谷石で建設された東京の旧帝国ホテルが関東大震災で耐火耐震性が認められたことをきっかけに、一躍全国に普及するように。大谷資料館の近く、大谷寺(おおやじ)は大谷石の洞穴に建立された日本屈指の洞窟寺院。平安から鎌倉時代に掘られたという石仏群は大谷石の「祈り」の文化を語っています。

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東武宇都宮〜大谷町
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大谷寺には大谷石の壁面に直接彫られた摩崖仏(まがいぶつ)が10体あり、すべてが国の特別史跡・重要文化財。とりわけ本尊の千手観音像は日本最古の石仏で、人々から「大谷観音さま」と尊崇されてきました。また、併設の宝物館には、昭和40年の工事中にお堂の下から発掘された、1万年以上前と推定される縄文時代の人骨が展示されています。

大谷寺への参道を抜けると、そこは大谷石の奇岩に囲まれた広場。採掘跡の壁面に総手彫りで造られた高さ27mの平和観音像がそびえ立っています。太平洋戦争の戦没者を追悼するために、昭和23年から6年の歳月をかけて完成した現代の摩崖仏です。

2018年、大谷資料館はじめ市内38の物件を構成文化財とした「大谷石文化が息づくまち宇都宮」が日本遺産に認定されました。廻遊式庭園をもつ栃木県中央公園もその一つ。園内には大谷石貼りで斬新な意匠の旧宇都宮商工会議所が移築・復元されています。

さて宇都宮をあちこち巡った後は、市中心地の明神山(みょうじんやま)に鎮座する「ふたあらさん」こと二荒山(ふたあらやま)神社にご挨拶。じつはここもまた、日本遺産の構成文化財の一つになっています。江戸時代に組まれた境内の石垣に大谷石が使われているのです。

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