新・駅前そぞろ歩記

川俣・茂林寺前
川俣・茂林寺前

東武動物公園から久喜、加須、羽生と埼玉県北東部を走る東武伊勢崎線は、利根川を渡れば群馬県。最初の駅は邑楽(おうら)郡明和町にある川俣駅です。利根川に沿って広がる明和町の標高は17~21m 。「町の中で一番高いのは利根川の土手」と冗談を言われるくらい、平らな大地です。その土地の恩恵を活かしているのが果樹栽培。とくに梨は明治からの歴史を誇る特産品。利根川のかつての氾濫(はんらん)で運ばれる肥沃(ひよく)な土と、氾濫でも流されない根の強さが特産品になった理由だとか。

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川俣・茂林寺前
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明治32年に北千住〜久喜に開業した東武伊勢崎線は4年後、埼玉県と群馬県を分かつ利根川の手前まで延長され、終着駅として川の南岸に川俣駅が開設されました。群馬県に行くには、この駅から渡し船に乗り換えて利根川を渡っていたのです。しかし明治40年、利根川に全長591mの大鉄橋を架けて足利まで路線が延びた際に川俣駅は群馬県側へ移転。そんな歴史を彷彿とさせる場所が利根川のそばに。伊勢崎線の下を潜るレンガ組みのアーチ型トンネル。これは伊勢崎線が利根川を越えた明治40年頃に作られたものです。

明和町役場の近くには公園「ふるさとの広場」。水と緑に触れ合える空間が広がり、1周1750mの遊歩道では木漏れ日の中、ウォーキングが楽しめます。

さて、明和町は120年続く梨の里。7月下旬から11月まで季節ごとの品種が収穫されます。明和町の梨は基本的に直売で、市場への出荷はほとんどありません。「梨街道」沿いには、約20軒の直売所が並びます。梨だけでなく、巨峰や桃の栽培も盛んで、さらにシクラメンやカーネーションといった花の栽培にも力を入れています。

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川俣・茂林寺前
川俣・茂林寺前

茂林寺前駅は昭和2年の開設。いまも平屋の駅舎ですが、駅前に立つ3頭のタヌキ像と合わせて眺めると、じつにほのぼのした佇まい。さすがは分福茶釜(ぶんぶくちゃがま)伝説の最寄駅です。駅前からは、歩道に「ぶんぶくちゃがま」絵本案内板第1話~13話が設置。読みながら歩くと、いつの間にか茂林寺に到着します。

茂林寺前駅や茂林寺は、館林駅周辺やつつじが岡公園とともに、アニメ『宇宙(そら)よりも遠い場所』(通称「よりもい」)の聖地巡礼スポットになっています。このアニメ、NYタイムズの「2018年ベストTV番組20」(海外部門)にも選ばれた人気作です。

茅葺屋根の山門から本堂に続く茂林寺の参道。その両側には、ずらりとタヌキ像。伝説の分福茶釜は本堂の一室に安置され、その茶釜を茂林寺にもたらしたと伝わる老僧・守鶴(しゅかく)(タヌキの化身?)は守鶴堂に祀られています。

そして茂林寺のそばに広がるのは茂林寺沼湿原。豊富な湿原植物群や、多くの野鳥が観察できる貴重な自然です。同じ館林市にある多々良沼、城沼と合わせて「館林の沼辺文化を育んだ里沼」として日本遺産(文化庁)に認定されました。茂林寺沼は、里沼の原風景と茂林寺の信仰が共存する「祈りの沼」と位置付けられています。

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