外国人観光客がぐっと少なくなった浅草はいま、密を避けて、ゆったりと街歩きを楽しむのにぴったりの時期を迎えました。ならば、浅草寺周辺の定番スポットに加えて、広範囲をめぐってはいかがでしょう。古くから人々に愛され続ける、浅草の奥深い魅力がきっと見つかるはずです。

浅草のなかでいま一番ホットなエリアが、地元の人に「観音裏」と呼ばれる一帯。浅草寺境内の裏手を東西に走る言問通りを越えた、浅草３丁目や４丁目の界隈です。東武鉄道浅草駅から直線距離で５００ｍほど離れていることもあり、観光客の姿は少なく、静かで庶民的な雰囲気。そんな一帯に10年ほど前から、おしゃれなショップが次々とオープンしています。

「Les JUMEAUX GÉMEAUX」は、世界的ハイブランドのアロマキャンドルやフレグランスをセレクトしたショップ。「以前は青山に店を構えていましたが、この観音裏エリアの雰囲気と建物に惹かれて移りました」と、オーナーの澤崎さん。人通りの多い場所で一見さんをターゲットにするのではなく、会話をしながらじっくりと商品を選べるスタイルのお店にしたかったと言います。「香りを楽しむ文化は、日本に古くから存在していました。そして江戸時代、多くの人が集まり庶民文化が発展し〝粋〞が育まれたこの街で、香りを扱ったお店を出すおもしろさを感じたのです」（澤崎さん）。

浅草寺に隣接する浅草花やしき周辺からかっぱ橋道具街まで広がる西浅草も、ユニークなお店が数多く集まる注目エリア。フレッシュなフルーツがたっぷり味わえると話題の有名店「フルーツパーラー・ゴトー」や、劇場一体型ホテル「浅草九倶楽部」があることでも知られています。国際通りを渡った先では、〝日本らしさ〞にこだわったガレット＆国産シードルの専門店である「Fleur de Sarrasin」や、革製品の小さな工房「nasturtium」を見つけました。浅草周辺は江戸時代から続く「革の街」。革製品では日本屈指の出荷量を誇ります。細かなニーズにも応えてくれるセミオーダーシステムの「nasturtium」なら、一生もののレザーアイテムに出合えるかもしれません。

今回は浅草から、隅田川対岸の向島にある「東京ミズマチ®」まで足を延ばしてみました。対岸へは２０２０年6月に隅田川橋梁に添架された歩行者専用橋「すみだリバーウォーク」を渡ります。歩道橋の開通により、東京スカイツリータウン®も浅草からの徒歩圏内になりました。大人気のベーカリー「むうや」でカフェランチを楽しんで、個性的なデザインの商品が並ぶ雑貨店「KONCENT」でお気に入りのアイテムを探してみるのもいいですね。

こうして浅草を広くめぐっていると、風車やカラフルな和傘が一面に飾り付けられた壁など、フォトジェニックなスポットをいくつも目にします。色鮮やかな数種類の餡でデコレーションされた串団子や、大きな果物がごろっと入った色鮮やかなフルーツサンドなど、見た目が美しい商品もずらり。いまの浅草は、〝フォトジェニック〞がトレンドです。

浅草が江戸時代から変わらず愛され続けるのは、古きよき東京の伝統は残しながら、時代に合わせてお店や商品、そして街が変化し続けているからかもしれません。そこは、いつ訪れても新しい〝何か〞が見つかる街でした。