都心へのアクセスが良く、自然に囲まれた豊かな暮らしもできるとあって移住人気が高まっている埼玉県小川町。そんな小川町でオーガニック野菜を使った料理を提供する「分校カフェMOZART」を訪れました。

池袋から東武東上線快速でおよそ1時間。埼玉県秩父地方に隣接して小川町があります。町の中心部になっている小川町駅周辺を抜ければ、外秩父山地に囲まれた盆地のなかに田畑が広がり、のどかな空気が漂っています。

コロナ禍の時代を迎えた現在、この町への移住を希望する人が急増していることをご存じでしょうか。人気の高い庭付きの住宅は、不足状態が続いているほど。都心へのアクセスがいい上に、自然に抱かれて豊かな暮らしができることが一番の魅力となっています。

そんな小川町駅から路線バスと徒歩で20分ほどの場所に、週末になると町外からたくさんの人が訪れるカフェがあります。2011年に廃校となった小川小学校旧下里分校の木造校舎を使った「分校カフェMOZART」です。オーガニックの先進地として知られるこの地で採れた野菜を使った、ヘルシーな料理はもちろんのこと、ノスタルジックな廃校という空間と、日本の原風景を思わせる周囲の里山も人気の理由となっています。敷物を借りて、園内の好きな場所で食事を楽しめるのも、この環境を満喫してもらいたいというお店による心憎い演出です。

都心で暮らしながら、フードスタイリストやデザイナーとして活躍していた有賀香織さん。都会に暮らす子どもたちに田舎体験をさせたいと小川町を訪れ、人脈が広がるうちにこのカフェの運営を任されたといいます。

「このカフェに本格的に関わるようになったのは、2020年4月のこと。ちょうど新型コロナウイルス感染症が広がり始めたタイミング。当初は週末だけ通うつもりでしたが、コロナの影響で都心での仕事が減り、これまでの生活スタイルでよいのかと疑問を持つように......。考え抜いた結果、6月に移住することを決断しました」。

現在でも継続している都内での仕事などで、どうしても都心へ出る必要があった場合でも、東武東上線でわずか1時間ほど。都心に出やすく、豊かな自然が残っている――。この、都会でもなく、田舎過ぎない環境が魅力的だったと言います。

「実は小川町は、世界有数の有機の里なのです。カフェのある下里2区と隣の1区は、集落をあげて有機農業に取り組んでいます。日本全土で有機栽培の耕作地が0.4％ほどといわれるなか、小川町全体では10％ほどと高レベルを誇っているのです。ですから、当然カフェで使う野菜も地元産のオーガニック野菜のみ。安心安全なのはもちろん、野菜本来の美味しさが感じられます」。

カフェのメニューは、日替わり下里定食と平飼い卵のコッペサンド定食、揚げパン定食の3種がメイン。取材した日は、ニンジンの葉の天ぷら、旬のタケノコ、地元産大豆のコロッケという産地ならではの料理が並びました。

「お米は、地元産の8分づきの玄米。1日分の食物繊維が摂れてしまうほど、どのメニューにも野菜をたっぷりと使っています。魚介系の出汁を使うのでヴィーガン料理とは言いませんが、肉や魚をいっさい使わないのも特徴です」。

小川町の恵みたっぷりのランチを食べながら、新しい生活スタイルを考えてみてはいかがでしょうか。