都心はもちろん、全国各地に展開されている無印良品。品質にこだわりつつ、シンプルなデザインの多彩なアイテムは、多くのファンを持つ世界的なブランドです。近年、都心から離れた場所に、物販だけではない新たな魅力を備えた店舗が次々とオープンしています。その一つが無印良品 東武動物公園駅前。この町に移住した店長の松崎隼人さんに、他店との違いや町の魅力を教えてもらいました。

「静岡の清水で生まれ育ち、神奈川の大学で学ぶために上京。卒業後に良品計画に入社した後、隣町の久喜市の郊外にある店舗に勤務したのが、埼玉県との最初の深い関わりです。このとき、その地に暮らす人同士の顔の見える関係性や自然あふれる環境という、埼玉の魅力に惹かれました。そこで、“暮らしの編集学校”という社内研修に応募したのです」

この研修は、「最良の生活者を探求する」無印良品と地域の暮らしと社会を結びつけ、「暮らしの編集者」を育成することを目的とした取り組みです。「 これから商いを始めたい方の創業を後押ししていくシェアキッチン“みんなの台所”というスペースを設けました。さらに、誰でも自由に使い方を考え、学びや体験を共有できる“Open MUJI学び舎”、町の情報発信拠点となる“まちの案内所”というコーナーも新設。無印良品 東武動物公園駅前は、地域の人とのつながりのなかから、さらに魅力的な宮代町をつくっていく拠点となることをめざしています」

店舗の前にある“みんなの広場”は、自由にくつろげる芝生のスペース。人々とつながる機会となる、多彩なイベントが開催されています。

埼玉県在住者に聞いても、どの辺りにあるのか分からない人も多いという宮代町。「東武動物公園」の最寄り駅があることは広く知られていますが、2021年9月16日に無印良品の店舗が駅に隣接してオープン。話題の町となっているのをご存じでしょうか。

2021年4月時点の人口が3万強の宮代町は、昭和30（1955）年に百間村と須賀村が合併して誕生しました。町の中央を東武鉄道が縦断し、江戸時代以前は利根川本流だった大落古利根川が東側を流れています。駅を抜けると、住宅街や田畑が広がっていて、都心への通勤圏でありながら、のどかな雰囲気が漂っています。

かつての地方の町らしい姿が残され、隠れた魅力あふれる宮代町――。無印良品 東武動物公園駅前の店長を務める松崎さんは、そんな印象を抱いていたといいます。たとえば駅前にある町のコミュニティセンター「進修館」は、町のシンボル的な存在ですが、見るだけでも楽しいユニークな建築が目を引きます。住宅街の奥には、整然と区画された水田が広がり、季節ごとに美しい風景が見られます。