シンカ（進化・深化）の最前線　

2015年7月、池袋駅周辺地区一帯が特定都市再生緊急整備地域指定を受けたことにより、「池袋駅西口地区まちづくり協議会」が解散、新たに「池袋駅西口地区市街地再開発準備組合」が発足した。
池袋西口エリアの再開発は、東武鉄道も参画する準備組合による事業と、駅直上を含めた鉄道敷地部分における東武鉄道単独事業の2事業が一体となって計画が進められている。都市再生特別地区※の手法を用いた開発となることから、都市計画提案に向けた行政協議、建築計画などを準備組合と連携して進めることが求められた。都市計画提案前の最終段階で、プロジェクトにアサインされたのは鉄道事業に長く従事していた下野だった。※既存の用途地域などに基づく用途、容積率などの規制を適用除外とした上で、自由度の高い計画を定めることができる都市計画制度

「これまでのキャリアで初めて開発に携わることになり、池袋西口の再開発という大規模プロジェクトを担当するとは夢にも思っていませんでした。私は主に、鉄道施設改良計画の検討を行っています。駅部分の線路本数を現状の3線から4線に増設する計画としていますが、それにあたっては、限られた用地の中で駅をより良い空間にし、柔軟な列車運行計画が可能な線路線形にする必要があります。さらには、供用開始後の維持管理まで見据えた計画にしなくてはいけません。そのために、池袋駅の現状の課題やあるべき将来の姿について鉄道事業部門の各部署と議論を繰り返し、構想を具現化していきました。工事期間中も当然日々の鉄道運行や駅としての機能を確保していく必要があるため、その運用面にも配慮しつついかに安全かつ経済的な工事計画にするのかも腕の見せ所だと思っています」

通常の再開発事業に対し、鉄道会社が行う再開発事業は、駅とまちが一体となったまちづくりが可能だ。池袋駅が位置する豊島区は、池袋駅の課題を駅からまちに人が出ないことと捉え、駅の東西をつなぐウォーカブルなまちづくりを目指している。

「当社単独事業部分の線路上空には新たに歩行者動線のハブとなる空間整備を計画しており、新たな改札口の整備や、駅空間とまち空間が交流する魅力的なアトリウムの創出を検討しています。この空間は、将来計画されている東西自由通路の動線上にあり、準備組合の街区との接続部分でもあるため、まちにおける歩行者の回遊性を高めることにつながると考えています」