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シンカ(進化・深化)の最前線 

新たなフラッグシップ特急の開発新型特急N100系スペーシアXプロジェクト

KEYWORD

PART.1

フラッグシップ特急にかかわる喜びと責任
お客さまに喜ばれる車両設計を追求する

東武鉄道沿線最大の観光地である日光・鬼怒川エリアへの輸送には、時代に合わせたフラッグシップとなる特急列車がその役目を果たしてきた。昭和の1720系デラックスロマンスカー、平成の100系スペーシア。そして令和となった今、新たな時代の象徴となるような上質なフラッグシップを製作すべくプロジェクトが動き出した。プロジェクトの初期から車両設計に関わってきたのが久保田である。

「フラッグシップとなる特急を作る周期は、30年に一度しかない機会です。実際に私が携われるとは思っておらず驚いたのと同時に責任を感じました。100系スペーシアの後継車として、新たな技術や考え方を取り入れ、東武グループの、そして日光・鬼怒川の「顔」として駅と駅をつなぐだけでなく、さまざまな情報やサービスを提供することでお客さまとつながり、幾度も日光・鬼怒川に訪れたくなる特急を目指し、開発を進めていきました。プロジェクト当初はコンセプトやデザイン構築、インテリア、エクステリアまで幅広く関わり、プロジェクトメンバーと議論を重ねていきました」

メンバー全員、お客さまに長く愛された100系スペーシアの後継であるフラグシップ特急への思い入れは強く、さまざまなアイデアが出され、夢がどんどん広がっていった。最も議論が白熱したのは、お客さまにどのように喜んでいただくかということだった。

「多様性を意識し、ターゲットとなるお客さま層を限定せず、家族や友人グループ、カップル、一人旅、インバウンドなど乗車される方一人ひとりが自分だけの最適な旅を楽しめるよう6種類の座席を用意し、それぞれ居住性を高めたものにしていきました。座席も室内の印象を考慮して、材料表面を構成する要素であるCMF(Color:色、Material:素材、Finish:仕上げ)など時間をかけて検討を重ねました。ここで役立ったのは、毎年、車両を新造し続けてきた経験です。過去に通勤車両の設計で検討した座席の作り方はとても役立ちました。アイデアを形にする時、活かせる引き出しが多いのも当社ならではだと思います」

コンセプトやデザインなどが確定した後、久保田は電気機器システム構築に主に携わっている。

「お客さまの目に触れる、手に触る部分だけではなく、快適な環境や安全運行、省エネ化などの目には見えない部分にもこだわることが、お客さまに長く愛されることにつながると思っています。まだまだ気を抜くことはできないですね」

PART.2

地域を活かし、地域を活性化する
共創をテーマに取り組んでいく

運行に関するお客さまサービス全般を担っているのが営業部だ。“新しい時代の日光観光の象徴となる、より上質なフラッグシップ特急をつくる”というプロジェクトメンバー間の共通認識のもと、新型特急のブランディングやPRによる期待感の醸成、おもてなしなどの接遇教育といった多岐にわたる役割を担っている。今回、スペーシア Xの1号車に設置されるカフェカウンターの商品開発やオペレーションを担当するのが原である。

「新しい車両をつくるだけでなく、どうしたら地方創生につながっていくのかをみんなで考えていきました。そこで出たアイデアは地域を活かし、地域を主役にすること。日光・鬼怒川エリアのこれからを担っていく事業者にお声がけし、共に開発した車内限定商品を提供します。そうすることで皆さんが知っている日光・鬼怒川に加えた、新しい魅力に気づける移動体験を目指しました」

こうして生まれたのが看板メニューとなるクラフトビール「Nikko Brewing」とクラフトコーヒー「日光珈琲」だ。さらに日光らしい味覚や組み合わせが楽しめる「食」を提案し、多様な日光体験ができるメニュー開発へとつながっていった。そして地域活性化に向けた企画は車両だけでない周辺企画へと発展していく。

「新型特急の導入をきっかけとした新しい旅行やライフスタイルを共創する#アップサイクルTOCHIGIプロジェクトを開始しました。栃木県を舞台に、地元企業と共創しながら有形無形の地域資源を活用したさまざまな取り組みを進めています。当社単体ではなく地域の方と一緒に栃木の未来を考えることで新しい旅や体験のコンテンツを創出し、沿線地域活性化へとつなげていきたいと考えています」

単なる新しい車両の導入で終わらせることなく、地域に根差し、チャレンジし続ける。原の取り組みはさらに広がっていく。

「集客だけでなく、新しい旅のスタイルを一緒に考え、どんな体験があれば実現できるか、価値観までつくっていくことは、まさに新しい“コト”でとてもチャレンジングだと思います。実現できた先には日光・鬼怒川エリアの新しい旅行・観光スタイルになる!という意気込みをもって取り組んでいます」

PART.3

ダイヤは鉄道の商品
お客さまがご利用しやすいスペーシアXの設定

2023年7月15日、スペーシアXの運行開始に向け、さまざまな準備が進む中でダイヤ検討もまた進んでいる。通常は接続や目的地への所要時分など、多くのお客さまに利便性・速達性の提供を意識し策定される。加えてスペーシアXはフラッグシップ特急として、利用促進とサービスの成立という2つの要件を満たし、他の列車の運行や設備的な制約を踏まえながら、お客さまに選んでいただくためのダイヤを策定することが求められた。このダイヤ策定に携わるのが友寄である。

「初めてスペーシアXのデザインを見たとき、すごくワクワクしました。お客さまも絶対に驚かれる車両になるという確信があったので、ダイヤ策定にあたってはより多くのお客さまにご利用いただくことを第一に考えました。スペーシアXのメインターゲットは観光目的のお客さまです。営業部と連携し、これまで蓄積している特急乗車率データを分析した結果、需要の高い朝の時間帯、加えて全国各地やインバウンドの需要に応える午後の早い時間帯に浅草駅を発車するダイヤを策定しました」

日光・鬼怒川エリアには、SL大樹の乗車が目的の観光客も多い。東武日光方面・鬼怒川温泉方面への分岐となる下今市駅では、できる限り時間のロスが少ない乗り継ぎが設定された。他にも、多岐にわたる観点でダイヤ策定に取り組んだと友寄は言う。

「これまで特急の浅草駅着発番線の指定がありませんでしたが、お客さまに分かりやすく、日光・鬼怒川エリアへの旅の出発点だという期待感を高めるために、スペーシアXの着発番線を統一しました。また、発車前に写真撮影できるよう、カフェカウンター車両への商品搬入・搬出に15分以上停車時間を確保するなど、これまでにない調整を図りました。もちろん、1つを動かせば他の列車のすべての調整が必要になってくるのがダイヤ策定の難しいところでもあります。全体のバランスを考慮した中で、スペーシアXの利便性を高めるダイヤを策定することはダイヤ担当者にとって難しい仕事でしたが、最適なダイヤになったと自負しています」

ダイヤ策定はひとまず終了したが、スペーシアX運転開始前には、実サービスの検証・関係者の連携確認のため、実際の運転に則したテスト運行を行い、万全な準備をして営業開始させることとなる。

「日光・鬼怒川への誘客のライバルは、ほかの観光地だけでなく車でもあります。運行部門として、お客さまに選ばれるように、積極的に携わっていかなければなりません。ダイヤは鉄道会社の商品ですので、スペーシアXとともに利便性の高いダイヤをお客さまに提供していきたいですね」

シンカのこれから

久保田
2023年の7月15日は一段落の日でもあり、これからが勝負になると思います。まずは、お客さまを安全・安心・快適に輸送することが大切ですので、そのために車両をしっかりとメンテナンスしていかなければなりません。そして、実際にお客さまがご乗車され、目にされ、手に触れることでどのように感じられるか、しっかりと耳を傾け、より良い車両へとシンカ(進化)させていきたいです。


プロジェクトにあたって、100系スペーシアをつくった30年前のことを調べたところ当時の社内報に反響などこと細かく記載されており、その後継車両にかかわることの重さを実感しました。同じように30年後の人たちにスペーシアXを財産として残していきたい。そのために未来につなぐ価値の基盤としていきたいと思います。

友寄
お客さまのニーズを汲み取り、スペーシアXをアップデートし続ける使命が私たちにはあると思います。運転開始後、乗車率やお客さまの流れをみながら、一層選んでいただけるようにダイヤを更新していきます。また、お客さまに喜ばれる仕掛けや話題創出のためイベント列車を計画するなど、スペーシアXが旅の目的となるようチャレンジを続けることが求められると思います。

MEMBER※所属は取材当時の内容です

PROJECT

TOBU RAILWAY CO.,LTD. | POTENTIAL RECRUITING SITE