空が少し重く感じる6月は
静かな時が流れる美術館へ。
作家のまなざしの先に広がる
深い世界に癒やされますよ。

2025.6 No.912 掲載

《問いかけの本》

パロマ・バルディビア 2022年
  • パロマ・バルディビア《問いかけの本》2022年 ©Paloma Valdivia
    ●「ブラチスラバからやってきた! 世界の絵本パレード」
    開催中~2025年7月6日(日)

  • 桃山鈴子
    《へんしん すがたをかえるイモムシ》
    2021年 ©桃山鈴子

世界最大規模の絵本原画展から
受賞作がずらりと足利市立美術館へ

スロバキア共和国の首都・ブラチスラバで、2年ごとに世界最大規模の絵本原画展が開かれることをご存じでしょうか。2023年で第29回目を迎えた「ブラチスラバ世界絵本原画展(BIB2023)」で、36か国・275名の作家による355冊の絵本、総計2072点の原画からグランプリに輝いた作品がこちら。日本の絵本ファンにも愛されるチリの国民的絵本作家、パロマ・バルディビアのものです。足利市立美術館で開催中の「ブラチスラバからやってきた! 世界の絵本パレード」は、そんな「BIB2023」受賞作品が一堂に会する展覧会。日本代表10組の作品や各作家の創作の背景に迫る展示も注目です。

足利市立美術館 あしかがしりつびじゅつかん
  • 0284-43-3131
  • 栃木県足利市通2-14-7
  • 10:00~17:30(閉館18:00)
  • 月曜
  • 一般710円、高校・大学生500円、中学生以下無料
  • 伊勢崎線 足利市駅から徒歩10分
  • http://www.watv.ne.jp/ashi-bi/
企画展

はじめての古美術鑑賞-写経と墨蹟-

開催中~2025年7月6日(日)

国宝 《観普賢経》
(無量義経・観普賢経のうち、部分)
平安時代 11世紀
根津美術館蔵

東京・表参道の根津美術館で、写経と墨蹟をテーマにした企画展が開幕しました。写経は仏教の経典を書写したもの、墨蹟は禅の心得を書いた禅僧の書。一見難しそうなふたつのジャンルの作品を、本展ではまずその造形的な違いを楽しんでもらおうと展示室を二分して配置。書としての見どころや歴史的重要性などもわかりやすく解説されていて、古美術鑑賞の新たな扉を開いてくれそうです。

根津美術館 ねづびじゅつかん
  • 03-3400-2536
  • 東京都港区南青山6-5-1
  • 10:00~16:30(閉館17:00)
  • 月曜
  • オンライン日時指定予約 一般1300円、学生1000円、中学生以下無料
  • 東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線 表参道駅から徒歩8分
  • https://www.nezu-muse.or.jp/
特別企画展

めぐる いのち 熊谷守一美術館40周年展

開催中〜2025年6月29日(日)

熊谷守一
《陽の死んだ日》1928年
公益財団法人大原芸術財団
大原美術館蔵

画家・熊谷守一が亡くなるまで45年間暮らした地に建つ熊谷守一美術館。開館40年を迎える本年、守一が家族を描いた絵を中心に集めた特別企画展が開催中です。わずか4歳で亡くなったわが子を描いた《陽の死んだ日》が同館で初めて展示されるほか、岐阜県美術館蔵の代表作《ヤキバノカエリ》など名作が集合。画家が見つめた命の輝きと家族の物語にふれてみては。

豊島区立熊谷守一美術館 としまくりつくまがいもりかずびじゅつかん
  • 03-3957-3779
  • 東京都豊島区千早2-27-6
  • 10:30~17:00(閉館17:30)
  • 月曜
  • 一般700円、高校・大学生300円、小・中学生100円、未就学児無料
  • 東京メトロ 有楽町線・副都心線要町駅・千川駅から徒歩各9分
  • https://kumagai-morikazu.jp/exhibition

《クロティルド&アレクサンドル・サカロフ》

ジョルジュ・バルビエ 1921年
  • 《幼きイエスの小さなテレーズの物語》アレクサンドル・チェレプニン(作曲)、アンドレ・エレ(絵)1926年

  • 《『フイエ・ダール』第1号》1921年

  • 《クロティルド&アレクサンドル・サカロフ》*

全て鹿島茂コレクション(*練馬区立美術館寄託)
©NOEMA Inc. Japan

1920年代、アール・デコが花開いたパリ──
時代を先駆けたトップアーティストの名作

第一次世界大戦からの復興で工業化が進んだ1920年代。変容する社会の最先端で生まれた装飾様式、アール・デコがパリを中心に世界的に流行しました。現在、そんな20世紀前半フランスのグラフィックに着目した大規模な展覧会「鹿島茂コレクション フランスのモダングラフィック展」が群馬県立館林美術館で開催中。なかでも、当時のパリを代表するアーティスト、ジョルジュ・バルビエがロシア人舞踊家夫妻を描いた本作は、鮮やかで平面的な色彩、優美な曲線などまさにアール・デコを象徴するような美しさ。近年収蔵の新出品作品まで、フランス・モダンの世界に浸ってみませんか。

群馬県立館林美術館 ぐんまけんりつたてばやしびじゅつかん
  • 0276-72-8188
  • 群馬県館林市日向町2003
  • 9:30〜16:30(閉館17:00)
  • 月曜
  • 一般830円、大学・高校生410円、中学生以下無料
  • 伊勢崎線 館林駅から多々良巡回線バス、県立館林美術館前下車すぐ
  • https://gmat.pref.gunma.jp/exhibition/

●「鹿島茂コレクション フランスのモダングラフィック展」開催中~2025年6月29日(日)

特別展

蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児

開催中〜2025年6月15日(日)

《婦女人相十品 ポッピンを吹く娘》
喜多川歌麿 寛政4-5(1792-93)年頃 東京国立博物館蔵
前期(~5/18)展示

現在放送中の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK)で話題の“蔦重”こと蔦屋重三郎。喜多川歌麿、東洲斎写楽など、名だたる浮世絵師を世に出したことで知られる江戸時代の出版業者です。本展は、東京国立博物館の所蔵品を中心に彼の革新的な出版活動をつぶさに紹介する特別展。大河ドラマとも連携し、江戸時代後期の江戸の街の様相や多彩な文化も体感できます。観覧後はドラマの舞台である台東区でゆかりの地めぐりを楽しむのもおすすめ。

東京国立博物館 平成館 とうきょうこくりつはくぶつかんへいせいかん
  • 050-5541-8600(ハローダイヤル)
  • 東京都台東区上野公園13-9
  • 9:30~16:30(金・土曜は~19:30、閉館は各30分後)
  • 月曜
  • 一般2100円、大学生1300円、高校生900円、中学生以下無料
  • JR上野駅公園口から徒歩10分
  • https://tsutaju2025.jp/

タピオ・ヴィルカラ 世界の果て

開催中〜6月15日(日)

《ボッレ》 1967 年、ガラス
Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation Collection / EMMA - Espoo Museum of Modern Art.
© Ari Karttunen / EMMA ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2024 C4780

北欧モダンデザインの巨匠として世界的に知られるタピオ・ヴィルカラ(1915~1985)。その日本初となる大規模個展が開幕します。1940年代後半から50年代にかけてイッタラ社のデザインコンペ優勝、ミラノトリエンナーレへの3度の入賞などで脚光を浴びたヴィルカラ。デザイナー、彫刻家、造形作家として多彩な創作活動を展開しました。エスポー近代美術館の協力で行われる本展では、プロダクト、ガラスや木による彫刻、写真など約300点が見学できます。

東京ステーションギャラリー とうきょうステーションギャラリー
  • 03-3212-2485
  • 東京都千代田区丸の内1-9-1
  • 10:00~17:30(金曜は~19:30、閉館は各30分後)
  • 月曜(6月9日は開館)
  • 一般1500円、高校・大学生1300円、中学生以下無料
  • JR東京駅(丸の内北口改札)からすぐ
  • https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202504_tapio.html

ミロ展

開催中〜7月6日(日)
  • 《明けの明星》 1940年
    ジュアン・ミロ財団、バルセロナ

    Fundació Joan Miró, Barcelona.
    Gift of Pilar Juncosa de Miró.
    © Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2025 E5746

20世紀を代表する巨匠、ジュアン・ミロ。1893年にスペインのカタルーニャ地方に生まれ、90歳で亡くなるまで新たな表現技法を追求しつづけました。その偉大な創作活動を振り返る、空前の規模の大回顧展が開幕。代表作である<星座>シリーズのうち3点が出品されるほか、各時代を代表する名品が世界中から集結します。20世紀美術を牽引し、現在までアートシーンに大きな影響を与えるミロの芸術の軌跡を体感してみませんか。

東京都美術館 とうきょうとびじゅつかん
  • 050-5541-8600
  • 東京都台東区上野公園8-36
  • 9:30~17:00(金曜は~19:30、閉館は各30分後)
  • 月曜(祝日の場合は翌平日)
  • 一般2300円、大学・専門学校生1300円、65歳以上1600円、高校生以下無料
  • JR上野駅から徒歩7分
  • https://miro2025.exhibit.jp/

text : Fumiko Sato photo : Kota Yamashita、関係各施設