2025.8 No.914 掲載

外国人たちにも愛され続ける
中禅寺湖は夏のオアシス

関東の代表的な避暑地として知られる、日光の男体山さん(なんたいさん)に広がる中禅寺湖(ちゅうぜんじこ)。夏でも涼しい湖の周囲には、明治中頃から昭和初期にかけて、各国大使館の別荘が集まっていました。

この地に外国人が集まるきっかけを作ったのは、当時のイギリス人外交官アーネスト・サトウだといいます。彼は中禅寺湖周辺が故郷イギリスの風景に似ていたということもあり、この地をこよなく愛するようになりました。その後、サトウが英文のガイドブック『日光案内』を刊行すると、各国大使館をはじめ多くの外国人の別荘が集まるように。サトウ自身も湖畔に別荘を建て、やがてこの地は国際避暑地となりました。

今でも国内外からの観光客でにぎわう中禅寺湖。都会の暑さから逃れるために、各国大使たちが夏を過ごした地を訪れてみませんか?

外国人たちのバカンス文化をヒントに!

避暑地の暮らしを取り入れて、
涼やかなプチオアシス気分を

避暑地に出かけたいけど、なかなか行けない……という人へ。
中禅寺湖で夏を送った当時の外国人たちの暮らしぶりをヒントに、
普段の遊びや生活でちょっぴり避暑地気分を味わってみてはいかがでしょう。

アクティビティ

当時の中禅寺湖ではヨットやマス釣りがレクリエーションの代表でした。夏の時期はヨットレースも開かれていたそうですが、最近ではサップなどを楽しむ人が多いようです。ヨットはちょっとハードルが高いですが、サップや釣りなら都心や東京近郊にも体験スポットが多くあるので、この夏挑戦してみては。

ティータイム

イギリスのティータイムといえば、お皿を重ねたアフタヌーンティーを思い浮かべますね。当時の外国人が日本でそれを味わっていたかは定かではありませんが、きっとテラスで湖を眺めながら優雅な時間を楽しんだのでしょう。しかし都会では真夏のテラスは激アツ。涼しい部屋の中で冷たいアイスティーとスコーンなどをいただいて、くつろぎタイムをちょっぴり英国風に。

インテリア

イタリア大使館の別荘は、室内の壁や天井に杉皮や竹などを張りめぐらせ、自然の豊かさと涼しさを演出しています。家の内装を変えるのは大変ですが、竹すだれのカーテンや、百円ショップなどでも手に入る竹や籐などの小物を取り入れると、見た目が涼しげで気分もリフレッシュ。

各国の外交官たちが夏を過ごした避暑地へ行ってみませんか?

英国大使館別荘記念公園
えいこくたいしかんべっそうきねんこうえん

中禅寺湖の豊かな自然や国際避暑地の歴史に触れることができる公園。園内の建物はもともとイギリスの外交官アーネスト・サトウの個人別荘として明治29(1896)年に建てられたもので、その後、英国大使館別荘として使用されました。現在の建物は当時の姿に復元したもので、2階のティールームではスコーンと紅茶のセットなどが楽しめます。

2階の広縁からは中禅寺湖畔の美しい風景が一望できる

イタリア大使館別荘記念公園
イタリアたいしかんべっそうきねんこうえん

英国大使館別荘記念公園の近くにある公園。昭和3(1928)年、著名な建築家アントニン・レーモンドの設計により建てられたイタリア大使館の別荘を、当時の設計図をもとに復元。床板や建具、家具などをできる限り再利用して復元した室内は見応えがあり、1階の開放感あふれる広縁では、ソファに座って中禅寺湖が見渡せます。隣接する国際避暑地歴史館も必見です。

さまざまな模様の杉皮が張りめぐらされた書斎

2園共通データ

text : 稲元孝子 illustration : ラニー・イナモト