2026.7 No.925 掲載

第7話
これからは「盆踊り」とともに生きていく!

下手の横好き、という言葉がある。下手なのにその物事が好きで熱心に行うという意味だが、私にもダンスという立派な下手の横好きがある。

「それは謙遜で上手いんでしょ?」と思う人もいるかもしれないが、本当に下手だ。振付は致命的に覚えられないし、リズム感も運動神経もない。ただ、音楽がかかると踊りたくなる性た質ちなのだ。

海外だと、太ったおじさんやおばさんも、決してダンスが上手くはない若者も、楽しそうにクラブで踊っていたりする。日本では、「踊っていいのは格好良くダンスできる人だけですよ?」と銀縁眼鏡をかけた黒服がダンスフロアで見張っている気がして(そんなことはない)、クラブに行ったりするのは大変に気がひける。

ダンス教室にでも行けば上手になれるかと一時期通ってみたが、私がクラスの進行をたびたび妨げるのが居たたまれず、やめてしまった。

そんな私がついに踊れる場所を見つけた。それは、「盆踊り」である。

盆踊りにだって振付はあるから、無理だと思っていた。だが、近所で毎年やっている盆踊り大会が、レッスン動画を配信しているのに気付いた。振付もいたって簡単、同じ動作を繰り返すだけ。東京音頭などの伝統曲より、流行りのポップス曲がメインである。今の盆踊りってこんな感じなのか。これなら自分にもできるのではないか。

振付をなんとなく覚えて浴衣に着替え、いざ盆踊りの会場へ。やぐらを中心に人がぐるぐる回る伝統的なスタイルだ。ああ、踊れる、踊れるよ。間違えても注目されないし、周りの人を見ていれば振付も思い出せる。ひたすら楽しい。

ふと、年配の方が美しい所作で踊っているのが目に入る。上手な人に普段感じる気後れはなかった。上級者も、私のような初心者も、子どもも、外国人も、自分なりの踊り方で楽しそうにしている。踊りたいという気持ちがあれば、どんな者も受け入れてくれる懐の深さが、盆踊りにはある。

結局「まだ踊るの?」とあきれ顔の友人とともに、滝汗をかきながら数時間、踊り続けた。私の横好き心が、喜びで飛び跳ねていた。これからは盆踊りとともに生きよう、と誓った夏だった。

今年も当日を楽しみにしている私である。

朝水 想 イラスト 別府 麻衣

あさみ・そう
小説家、旅行作家。出版社勤務を経て、旅行書籍の編集、旅エッセイの執筆などで活動。
第46 回小説推理新人賞を受賞。2025 年、小説デビュー作『お稲荷さまの謎解き帖』(双葉社)を刊行。千葉県出身。
X:@asami_sou25