-
01
最新号
-
02
あなたのONE SCENE
新河岸駅~川越駅
-
03
クロストーク
春風亭一之輔さん
-
04
こよみ、くらし。
すす払い
-
05
おとなの私のセルフケア
3分間の魔法の話
-
06
ちょっと、そこまで
鐘ケ淵編
-
07
アートのはなし
-
08
Window on TOBU
-
09
東武沿線小説「てむちゃん」
-
10
てみやげ、おもたせ、心づかい
MIYA バターサンド
-
11
「パズル」でアタマの体操
スリザーリンク編
-
12
日常から生まれた川柳
-
13
バックナンバー
プレゼントがあたる!
プロフィール
落語家
| しゅんぷうていいちのすけ | |
| 春風亭 一之輔 | さん |
1978年千葉県野田市生まれ。高校時代から寄席に通い、大学卒業後の2001年に春風亭一朝に入門。12年に真打昇進。200を超える古典落語の演目に現代性を盛り込んだ芸風で今最もチケットが取れない落語家の一人として知られる。
日本テレビの国民的人気番組『笑点』の
大喜利メンバーとしても
すっかりおなじみの春風亭一之輔さん。
19歳まで千葉県野田市で過ごした師匠に、
東武線沿線での思い出や
年末年始の落語の楽しみ方を聞いてみました。
暮れは人情噺、新年は縁起のいい演目
年末年始に楽しみたい寄席のすすめ
落語にハマった原点は
東武線で行った浅草の寄席
――東武線沿線で育ったそうですね
地元は東武野田線、今はアーバンパークラインですか、その野田市駅の近くです。ここはもう東武線がなかったら陸の孤島みたいな町で(笑)、でかけるなら東武線に乗るしかない。小さなころに回転展望レストランに驚いたのが柏ですし、特別な何かを買おうってなれば野田線で柏まで行くのが普通。高校は埼玉県立春日部高校に行ったので、野田線で八木崎駅まで通学。大学浪人時代も野田線で柏の予備校に通っていましたね。
――落語と出会ったきっかけは?
高校ではラグビー部に入ったものの、1年がまんして、でもツラくて辞めたんです。で、土曜日の午後とかやることがなくなっちゃったから、じゃあ春日部から電車で1本で行けるし、ひとりで浅草でも行ってみようかって。当時の浅草にはまだフランス座があって、バッティングセンターとかスマートボールのお店とかいろいろありましたが、今と比べると何かこう閑散としていましたね。どこかあやしい雰囲気もあったりして。そんな浅草でふらっと入ってみたのが寄席だったわけです。チケットは1300円くらいでしたでしょうか。
――それが強烈におもしろかった?
うん、強烈にはおもしろくないですよ(笑)。でも、結果として夢中になったんです。最初は始まったばかりの昼の13時とかに入って、お客さんもそれほどいるようないないような、笑っているようなそうでもないような感じで。見ていると15分おきくらいに出演者が次々出てくるわけですね。おもしろい人もいればそうでない人もいる。若い人もいれば、声が小さくウニャウニャ聞き取れないおじいさんもいて、手品のおばあさんまでいる。それがトリに向かって徐々におもしろくなっていく。最終的には最後の人が終わったらみんな大爆笑して、拍手して幕が下りて。そこまで見て、何かこれおもしろいぞって思ったんです。
――その後も通われましたか?
はい。通っているうちにだんだん寄席の世界って何やらすごくかっこいいなと思うようになりました。何となく責任がない、一所懸命やっていない感じというか、必死さを感じさせないところ。ダーッとしゃべってウケりゃしめたものだ、というようなあの感じがすごくいいなと。客席に自分と同じような年齢の人はいないですし、自分だけが見つけた秘密の場所みたいな、そんな感覚も抱いたのかもしれません。でも落語家って中高生のころに寄席でそういう感覚を覚えた人が多いようですね。
年間でなんと900席以上の高座にあがる一之輔さん。寄席に出ないと調子が狂うというほどの寄席好き
年末年始は着物を着て
寄席に行ってみては
――テレビ、ラジオ、高座とお忙しい日々ですが今年を振り返ると?
今年は……まぁいつもどおりなんですけど『笑点』に出て、自分の独演会などで地方にも行って、合間にはこまめに東京の寄席でしゃべったりして。自分は寄席に出ないと調子が狂うので、そうやってバランスをとって楽しくやっている感じでしょうか。『笑点』に出るようになって3年目。振り返れば寄席にもお客さんがいっぱい来てくれるようになりました。ありがたいことです。
――年末年始の寄席はどんな感じになるのでしょうか?
落語にも季節があって『芝浜(しばはま)』『文七元結(ぶんしちもっとい)』『睨(にら)み返し』などが年末らしい演目でしょうか。暮れは人情噺(ばなし)が多いんですよね。何かこうお金がなくて、切羽詰まって、どうしようもなくなって、でも誰かにいいことをしたら返ってくるみたいな話がけっこう多い。観る人も皆さん、年末で疲れているからなのでしょうか(笑)。
年が明けると一転してお正月らしい縁起のいい演目になります。落語では泥棒が出てくる話は縁起がいいといわれているんですよ。私たちもお正月だから上向きになるような、こんな話をしようかなどと考えますね。寄席で季節を感じるのも味わい深いものです。
――お正月はどう過ごしますか?
毎年恒例ですが、元日はまず弟子が来て、そのまま皆で師匠の家に行って、おせちやお雑煮をいただいて乾杯して、酔っぱらった感じでそのまま落語会とか寄席を3軒くらい回ってうちへ帰る。だいたい10日間はそんな感じ(笑)。寄席は元日からやっていますから、初詣などででかけた際に、ふらりと寄ってみるのもいいかもしれません。浅草、池袋と演芸場がありますから、それこそ東武線で一本で(笑)。和服を着ていると割引になるサービスがあったりもするので、チェックしてみてください。
WEB限定! 師匠の地元・野田のおすすめスポット
――今年は市政75周年で野田市PR大使もつとめられました。師匠的な野田のおすすめスポットを教えてください
子どものころは野田って工場しかない町だなんて思っていましたが、大人になって初めて気付く良さってありますよね。例えば町並みが美しいこと。野田は古くから醤油の醸造などで栄えた地ですが、駅から旧市街まで歩くと、茂木家、高梨家といった野田を代表する醸造家のお屋敷が今も残っていて、板塀が続く道はドラマのロケ地などにもなっているんです。一部は美術館にもなっていますし、街なかを歩くとなかなかいいかもしれないと思います。
――師匠が好きな場所・ものはありますか?
春になって暖かくなったら「清水公園」もいいですよね。フィールドアスレチックの水上コースというのか、あれはすごい。サスケみたいですからね、子どもならみんな夢中になりますよ。
あとは「ホワイト餃子」の本店でしょうか。やはり本店はすごい。野田の人はお正月でもお盆でも、人が集まるときは必ずホワイト餃子を焼く。100個、200個単位で買ってきてそれを家で焼くんです。で、いっぱい焼くから3つくらい残って、じゃあ明日食うかってね、そのまま流しの横とかに置いておくじゃないですか。もう冷めきって、ラップもかけてしなしなになっちゃって、それを夜中にトイレに起きたときにつまみ食いすると、それがまたすごいうまい。餃子なのに何なら冷めたほうがうまいって俺は思う(笑)。みんな大好きな地元の名物です。
インフォメーション
春風亭一之輔さん出演情報
2025年12月7日(日)
第294回府中の森笑劇場/春風亭一之輔独演会
【会場】 府中の森芸術劇場
2025年12月23日(火)
橘蓮二30周年記念公演 春風亭一之輔×桂二葉 二人会
【会場】有楽町朝日ホール
今回インタビューした会場はこちら
東京・神保町「らくごカフェ」
神保町交差点から歩いて30秒の場所にある、落語をテーマにしたカフェ。店内には高座と定員50名ほどの客席があり、一年を通して毎日のように落語会などさまざまな催しを開く。スケジュール、チケット予約方法などはHPを参照。
- 03-6268-9818
- 東京都千代田区神田神保町2-3 神田古書センター5階
- 落語会開催時に開店(詳細はHP参照)
- 落語会開催時に開店(詳細はHP参照)
- 演目によって異なる
- 東京メトロ半蔵門線、都営地下鉄三田線・新宿線神保町駅からすぐ
- https://rakugocafe.exblog.jp
text:Fumiko Sato photo:Chiemi Shimizu

