船橋編

2025.4 No.910 掲載

船橋漁港に面して広がる船橋港親水公園から見た眺め。漁船やヨットが係留された対岸から南に向かって、海老川から続く運河と海が広がっています。

東武鉄道の駅周辺をおさんぽするこの企画。
東武鉄道沿線で唯一、海に面した街、船橋を訪ねた今回は、歴史や港町らしさを地元の方に教えていただきました。

街を代表する古社から宿場の面影を探して街へ

(画像)船橋駅の南口広場。中央奥に見える東武百貨店 船橋店は、駅ビルになっています。
(画像)海老川の河口近くにかかる橋は、さまざまなパブリックアートで飾られています。

東武アーバンパークラインの南側の起点である船橋。飲食店の数が千葉県内屈指の多さを誇っていて、とくに駅南側は商業施設がところ狭しと軒を連ねています。そんなにぎわいを抜けて南へ進んで、行きつくのが本町通り。江戸時代にさまざまな街道の宿場が置かれた場所であり、成田山信仰が盛んになると、参拝者の休憩地としてさらに発展しました。
本町通りの東端に位置する意富比(おおひ)神社(A)、通称・船橋大神宮の千葉さんは、市民の心のよりどころとなっている古社の歴史を教えてくれました。

(写真右上)『延喜式』にその名が記された意富比神社の拝殿・本殿。
(写真右下)日本武尊・徳川家康公・徳川秀忠公を祭神とする、東照宮様式の常磐神社。
(写真左)漁師町らしさを感じさせる、船の形をした社殿の船玉神社。
(右下イラスト)政府公認の民設灯台だった灯明台

「約1900年前に創建したこの神社は、街とともに歴史を刻んできた古社。秋の例大祭では徳川家康公の上覧相撲を起源とする奉納相撲が行われるなど、朝廷・将軍家などの崇敬を受けてきました」
日本武尊が東征の際に東国平定を祈願したことが創建の由来とのこと。家康公の歯を納めた木像が安置された常磐神社、明治初期に建造された灯明台など、境内には数々の見どころが点在しています。

神社の千葉さんが教えてくれたおすすめの場所は、本町通りの西側にある日本料理 稲荷屋(B)。慶応元(1865)年に創業した、街を代表する老舗です。地元の干潟・三番瀬をはじめとした江戸前の魚などを提供するなか、現在の名物となっているのがうなぎ。みりんと醤油のみを創業当時から継ぎ足してきた秘伝のタレは、キリッとした江戸前の味わい。店の奥には料亭も併設しています。

(写真右上)人気の鰻定食は松3520円、特4290円、稲5390円の3種(特と稲はデザート付き)。
(写真左下)格式を感じさせるレストランの店内。別の入口を設けた料亭もあります。
(左上イラスト)大神宮を参拝した後は、こちらのお重をお願いするのもおすすめ

江戸前の魚介を仕入れる稲荷屋の石井さんは漁師町という顔を伝えるため、大平丸の会長で漁師の大野さんを紹介してくれました。
「東京湾沿いの他の街と同じように、船橋の漁師も廃業の危機にありました。運にも恵まれ、私たち漁師が努力して存続させたのです。今はスズキ、ホンビノス貝、コノシロなどが沢山水揚げされます」と大野さん。船橋漁港にある漁協直営の三番瀬みなとや(C)では鮮魚が買えるほか、ホンビノス貝や自家製の干物をその場で焼いて食べることもできます。

(写真左上)鮮魚は基本的に1g1.2円とリーズナブルなのも魅力。
(写真右下)海の恵みを知り尽くした店員さんから、その日のおすすめや美味しい食べ方を教えてもらえます。
(左下イラスト)その場で焼いて食べられるホンビノス貝

(写真右)海老川にかかる九重橋にある、この橋の近くに暮らした太宰治の肖像と代表作『走れメロス』の一節を刻んだレリーフ。
(左イラスト)かつて海老川に小舟を並べ、板を渡して橋の代わりにしたことが地名の由来であることを伝えるオブジェ

今回訪れたのはこちら

意富比神社(船橋大神宮)

おおひじんじゃ(ふなばしだいじんぐう)

  • 047-424-2333
  • 千葉県船橋市宮本5-2-1
  • 境内自由(授与所は9:00~16:30)
  • 無休
  • 東武アーバンパークライン 船橋駅から徒歩15分

日本料理 稲荷屋

にほんりょうり いなりや

  • 047-433-3131
  • 千葉県船橋市本町1-12-12
  • 11:30~14:00、16:30~22:00(日曜、祝日は~21:00、L.O.は各30分前)
  • 水曜(7・12月は無休)、年末年始・夏季休業あり
  • 東武アーバンパークライン 船橋駅から徒歩5分

三番瀬みなとや

さんばんぜみなとや

  • 047-434-0668
  • 千葉県船橋市日の出1-22-1
  • 10:30~15:00
  • 火・水曜(しけが続いたときも休)
  • 東武アーバンパークライン 船橋駅から徒歩21分

船橋地名発祥の地

ふなばしちめいはっしょうのち

  • 千葉県船橋市宮本2-1-25
  • 見学自由
  • 東武アーバンパークライン 船橋駅から徒歩10分

Ristorante Due by 2Leoni

リストランテ ドゥエ バイ ドゥエレオーニ

地産地消にこだわった本格イタリアンの人気店

県内産の食材をメインに、シェフが釣りあげた魚介が使われることもあるなど、厳選した食材が味わえる名店。写真上は3種あるランチのうち、メインが選べるオッティモ2200円。写真右下は入荷があった日に提供される船橋産ホンビノス貝の白ワイン蒸し1280円(夜のアラカルト)。

  • 047-481-8571
  • 千葉県船橋市本町5-6-12
  • 11:30~14:30(L.O.14:00)、17:30~22:00(L.O.21:00)
  • 日曜
  • 東武アーバンパークライン 船橋駅から徒歩3分

ワインと肉 COQ DINER

ワインとにくコックダイナー

自社醸造のワインと肉&チーズを味わう

船橋駅から徒歩16分の場所にある都市型ワイナリー「FUNABASHI COQ WINERY」直営のワインバル。とくに肉料理とチーズが評判で、やわらかくジューシーなランプ肉のロースト1380円(写真)がおすすめです。自社商品をはじめ世界各国のワインも充実。

  • 047-497-8171
  • 千葉県船橋市本町2-25-17
  • 17:30~25:00(日曜、祝日は16:00~23:00、L.O.は各フード1時間前、ドリンク30分前)
  • 不定休
  • 東武アーバンパークライン 船橋駅から徒歩7分
イベントINFO
海にまつわる行事が続々と

水神祭

海の安全と豊漁を祈願する、江戸時代から続く伝統行事。雅楽の演奏や舞を奉納する神事のほか、餅まきなどが行われます。

潮干狩りスタート

船橋市内の三番瀬海浜公園で人気の潮干狩り。例年4月下旬から事前チケットの販売が始まります。セブン-イレブンの端末機で購入可能。

text & photo : Taku Tanji illustration : Mai Beppu