雪国会津の独自の食文化を堪能しよう

会津の人の思いやりがあったかい。アイディアたっぷりの郷土料理

「会津の三泣き」という言葉をご存知ですか? 「会津に来たときはその閉鎖的な人間関係に泣き、なじんでくると人情の深さに泣き、去るときは会津人の人情が忘れ難く泣く」と言われ、会津人の性格を表したものとして知られています。

雪国で助け合いながら暮らしてきた人々の繋がりや、城下町という誇りからくる郷土愛が強い会津の人々。最初は壁を感じるかもしれないけれど、実は情に厚くてあたたかい。そんな会津の人々の人情味と郷土愛は、「食文化」にも現れています。

山深い会津だからこそ生まれた料理や、おもてなしの心を感じさせるものまで、よりどりみどりの会津郷土料理をここではご紹介します。

貴重な食材でおもてなし。会津を代表する郷土料理「こづゆ」

会津では昔から、結婚の日やお正月などのおめでたい席で、海の幸、山の幸をふんだんに使った「こづゆ」がふるまわれてきました。

こづゆは、たっぷりのホタテの干し貝柱でとった風味豊かな出汁に、里芋やニンジン、きくらげなどが入った会津の郷土料理。今でこそスーパーに行けばすぐに手に入る食材ばかりですが、昔の会津では特別な日にしか食べられないごちそうでした。

特に、会津の人たちにとって海産物は大変な貴重品。そのため、保存のきく乾物を使った料理が正月や冠婚葬祭の席でふるまわれるようになったのです。ぜいたくな一皿ですが、「いくらでも食べていってほしい」というサービス精神から、何杯おかわりしても失礼にならないとされています。

おもてなしの心は、作り方や盛り付けにも表れています。具材は7種類か9種類と、縁起の良い奇数です。できあがったこづゆは目でも楽しんでもらえるよう、普通の汁椀より浅く作られた朱塗りの器によそわれます。具だくさんで彩り豊かなこづゆには、会津人の人情味がたっぷりと詰まっているのです。

インパクト絶大! 会津の庶民の味「ソースカツ丼」

カツ丼というと卵でとじられたものを思い浮かべる人が多いと思いますが、会津の人たちにとっては「ソースカツ」が一般的。揚げたてのカツに甘辛いソース、千切りのキャベツ、そして会津のおいしいお米が相まった、会津を代表するソウルフードです。

会津のソースカツ丼は大正時代から親しまれてきたといいますが、ルーツは定かではありません。一説によると、洋食屋さんのまかない料理として作られたところから広まったとか。カツをソースに浸すお店もありますが、これはウナギの蒲焼きからヒントを得たとも言われています。

会津若松市の観光スポット「七日町通り」には、伝統の味を今に伝える名店が軒を連ねています。お店によってはどんぶりからはみ出るほどのカツが乗ったお店も。食べきれるか一見不安に思うかもしれませんが、お店によってはお持ち帰り用の器を用意してくれるので、安心して召し上がってください。

地元の恵みをいただくスローフード「山人料理」

自然の宝庫・尾瀬のふもとにある南会津郡檜枝岐村。豊かな自然と温泉が楽しめる秘境の旅館では、工夫をこらした「山人(やもうど)料理」が楽しめます。

高地にある檜枝岐村は米がなかなか育たないため、主食はそばやひえ、あわばかりでした。山仕事をする男たちに力をつけてもらおうと、村の女たちは知恵を絞り限られた食材で多彩な料理を生み出しました。それが山人料理の始まりです。

まずは主食となるそば料理。つなぎを使わない「裁ちそば」やそば粉でつくる「はっとう」「つめっこ」「やきもち」「そばがき団子」と、そばだけでこんなに種類が豊富です。

食膳に彩りを添えるのは山の幸たちです。春は山菜、秋はキノコと、季節によって食材を使い分けています。その日に採れたばかりの新鮮なものを出してくれる旅館もあります。

メインディッシュは、檜枝岐の清流で捕れる川魚。塩焼きはもちろん、お刺身でも提供されることもあります。さらに、ぜひここで味わいたいのが、檜枝岐の珍味として知られるサンショウウオ。天ぷらやから揚げにしていただきます。

山人料理には決まったメニューはなく、品目や調理方法も旅館によってさまざまです。檜枝岐でしか味わえない贅沢をぜひ堪能してください。

ユニークで趣向を凝らした料理と優しい心づかいが会津の郷土料理の魅力

郷土愛にあふれた会津の人々は、観光で訪れたお客様を温かくもてなしてくれます。そんな人情味が、会津の郷土料理からは強く感じることができます。

会津の風土が生んだ極上グルメとおもてなしの心を感じる旅へ、ぜひ出かけてみませんか?

※2019年12月現在の情報です