あのザビエルも世界に紹介した日本最古の学校「足利学校」

「日本国中最も大にして、最も有名な坂東のアカデミー」

「日本最古の学校」として歴史の教科書にも登場する足利学校。平安時代のはじめ、または鎌倉時代に創設されたとされます。誰が創設したかについては諸説ありますが、足利氏2代当主の足利義兼が最有力とされています。

足利学校は、室町時代から戦国時代にかけては関東地方の最高学府として多くの人々に学びを与えました。学生は全国から集まっていたそうで、沖縄出身者の名前も記録に残されているそうです。学生のほとんどは僧侶だったと言いますが、僧侶以外の学生には僧侶の学徒名が与えられ、共に学んでいました。

足利学校の存在には、キリスト教の宣教師として有名なフランシスコ・ザビエルも大きな興味を持ったと言います。彼はインドの布教本部に宛てた書簡の中で「日本国中最も大にして最も有名な坂東のアカデミー」と足利学校を記し、そのことで足利学校の存在は海外にまで知れ渡りました。日本国内はもちろん、当時としては世界的にも珍しい大規模な学問も場であったことが、このザビエルの反応からもうかがえます。

江戸期の建物も残る広々とした史跡

1921年に国の史跡に指定された敷地内にはさまざまな建築物があり、たくさんの学生が学んでいた往時を偲ぶことができます。

まず、足利学校と聞いておそらく多くの人が思い浮かべる「学校」の額が掲げられた門。これは「入徳門」と呼ばれ、足利学校に入る最初の門です。1668年に創建されました。

孔子を祀る「孔子廟」も、入徳門と同じ1668年の造営。建物の正式名称は「大成殿」で、中国の明の時代の古廟の様式を模した造りと伝えられています。

1754年には落雷による大きな火事に見舞われ、御祈祷所、方丈、書院、庫裡など数々の建築物を失うと共に、歴史を知る手がかりとなる貴重な資料なども失われてしまいましたが、明治、大正、昭和を経て修復保全が重ねられ、1990年には江戸時代中期の姿へと甦り、現在に至っています。

「近世日本の教育遺産群-学ぶ心・礼節の本源-」として日本遺産にも認定

2015年4月、国の日本遺産審査委員会は、史跡足利学校跡を含む「近世日本の教育遺産群-学ぶ心・礼節の本源-」を「日本遺産」に認定しました。

日本遺産とは、魅力ある全国各地のさまざまな文化財群を地域が主体となって整備・活用・発信して地域の活性化を図ることを目的に、その歴史や文化を辿るストーリーを文化庁が認定するものです。これまでに全国83のストーリーが認定されています。

足利学校のストーリーは、足利市の他、いずれも近世日本の教育遺産を持つ水戸市(茨城県)、備前市(岡山県)、日田市(大分県)の4市それぞれの歴史や建造物、儀礼などが一つのストーリーとして認定されたものですが、とりわけ日本最古の学校である足利学校が果たした役割は大きいと言えるでしょう。

近年は「コスプレの聖地」の一面も見せ人気に

誰もが一度はその名を聞いたことがあるに違いない「足利学校」。しかし、歴史の勉強だけではわからない、訪ねてこそわかるさまざまな魅力や歴史がここにはあります。すぐ隣の鑁阿寺と合わせ、ぜひ訪ねてみたい場所です。

近年は「コスプレの聖地」としてコスプレイヤーからも人気の足利市。足利学校の周辺でもコスプレイヤーの姿がしばしば見受けられます。日本遺産として、世界遺産を目指して、また学びの聖地からコスプレの聖地へ。歴史を大切にしながら新しい魅力を放ち続けるパワーが、足利学校からは伝わってきます。

※2019年9月現在の情報です