国宝指定の本堂を持つ真言宗大日派の本山「鑁阿寺(ばんなじ)」

日本100名城のひとつ。寺でもあり城でもある鑁阿寺

室町幕府を開いた足利氏の本拠地、現在の栃木県足利市に鑁阿寺(ばんなじ)はあります。

足利氏といえば、鎌倉幕府を倒して新幕府を開いた日本史上の重要一族。鑁阿寺は、元は1299年にその足利氏の邸宅敷地内に建てられた寺で、国の史跡に指定されています。また本堂は2013年に国宝に指定されており、足利市を代表する観光スポットの一つとなっています。

境内には多くの桜の木や樹齢650年の大銀杏の木があり、春は満開の桜、秋は黄金に色づいた銀杏が寺の荘厳さを引き立てます。

鑁阿寺がある場所には、もともとは足利氏の城館がありました。足利氏の祖である源義康が12世紀半ばにここに居館を構えたのが始まりで、現在は「日本100名城」の一つとしても知られています。城館の名残りとして、今でも寺は土塁と堀に囲まれています。大日如来を参拝する観光客はもちろん、日本100名城の一つを巡るために訪れる人も多く、重厚な城館の雰囲気と寺の優美な雰囲気の両方を持つ、独特の雰囲気に包まれた場所として人気です。

重要文化財もパワースポットもある鑁阿寺の見どころ

鑁阿寺の最大の見所は、やはり国宝に指定された本堂です。現在の本堂は1209年に足利尊氏の父・貞氏(さだうじ)により建てられたものです。これまでに幾度かの改修を経ながら、足利氏の偉業を後世に継ぐべくその姿が保たれ続けています。

この本堂は、日本建築が発展するきっかけとなった「禅宗様」という建築様式を早々に取り入れたことで有名です。禅宗様とは、当時の中国の建築様式に則った、当時の寺院建築としては最先端の建築様式であり、この様式を関東地方でいち早く取り入れた例としての価値の高さから国宝に指定されました。屋根のひさしの下には見事な装飾が施されています。

本堂の隣にには「一切経堂」があります。一切経堂には回転式の収納庫に約2,000巻の経典が保存されており、この収納庫を一回転させることでお経を10万回読破したのと同じ徳が得られる言われています。現在の一切経堂は1407年に建てられたもので、国の重要文化財に指定されています。

境内には他にも、鎌倉後期に建てられ一切経堂と同じく国の重要文化財に指定されている鐘楼、徳川五代将軍・綱吉の母、桂昌院によって1692年に建てられ県の重要文化財に指定されている多宝塔など、歴史を感じる様々な建築物があります。

多宝塔には金剛界大日如来と勢至菩薩が祀られており、毎月23日の夕方から夜の間に参拝が可能です。参拝時にいただけるお種銭は「お金に不自由しないお守り」として有名です。

足利一族の栄華をしのぶ歴史の旅へ

「鑁阿寺」より少し手前に佇む、「足利尊氏公像」

寺院としてだけではなく城館としての名残りも感じられる鑁阿寺。広さは約4万平方メートルと広大で、周囲が水塀と土塁で囲まれており、四方に門が構えられています。寺域の広さは当時の足利氏の勢力の大きさを示すものでもあり、歴史の一時代を彩った一族の栄華をしのぶことができる名スポットです。

本堂周りに古くから立つ樹齢650年の大銀杏の木や、春に花咲く桜の木など自然の豊かな情景も楽しめるので、秋は紅葉、春は花見と自然を楽しむにも絶好の場所です。日本100名城巡りのスタンプや御朱印をいただきながら、ゆっくりと境内を巡り、歴史を感じてみてください。

※2019年9月現在の情報です