大谷資料館で、旧帝国ホテル本館にも使われた「大谷石」の魅力を知る

大谷石は火に強く軽い「万能石材」

大谷石とは、栃木県宇都宮市大谷町周辺で多く産出される灰緑色系の凝固石です。新生代第三紀の火山活動で噴出した火山灰が海水中に蓄積されて形成され、後に隆起し現在の大谷石の姿になりました。かつては露天掘りでつるはしによって採石されていましたが、今は石切場が地下数十メートルに移り、チェーンソーによって大規模に掘り出されています。

大谷石は火に強く、1000℃以上の熱にも耐えられるため、七輪、石窯、焼却炉などにも使われる「万能の石材」です。また、他の石と比べてとても軽く、柔らかくて加工もしやすいため、古くから基礎石、土留め、石塀、外壁、屋根といった建造物の一部として、さらには石仏、石塔、民芸品などに至るまで、幅広く用いられてきました。現在は建物の内外装材としての使用が主流になっています。

名建築家フランク・ロイド・ライトも魅了した独特の風合い

大谷石を使用した有名な建物では、東武宇都宮線の南宇都宮駅、東武東上線のときわ台駅、宇都宮市のカトリック松が峰教会、兵庫県芦屋市のヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)、などがあります。ヨドコウ迎賓館は国指定重要文化財に、カトリック松が峰教会は国登録有形文化財に指定されています。

そうした建築物の中でも特に大谷石の存在を全国に、また世界に広める役割を果たしたのが、アメリカの建築家フランク・ロイド・ライトにより大正時代に設計された旧帝国ホテル本館です。大谷石のその風合いに大きな魅力を感じたライトは、設計にあたり大谷石を大胆に取り入れ、数ある彼の名建築の中でも最高級の傑作と言われる建築物を作り上げました。現在は玄関部分のみが愛知県犬山市の明治村に移築保存されています。また、日光市の東武ワールドスクウェアには1/25スケールの全体模型があります。

この旧帝国ホテル本館に取り入れられたのは、大谷石×スクラッチ煉瓦、彫刻を施した大谷石×テラコッタなど、大谷石と他の素材との絶妙な組み合わせ。素朴で柔らかく、温かみのある質感がより発揮され、当時の建築業界においてひとつのブームとなったと言われています。南宇都宮駅やときわ台駅の駅舎からは、その流行の一端が感じ取れます。

映画のロケにも使われる採掘場跡の異空間「大谷資料館」

「大谷資料館」は大谷石の採石場跡を見学できる博物館です。思わず圧倒される巨大な抗内地下空間が人気で、その壮大で神秘的な雰囲気から有名アーティストのミュージックビデオやCMの撮影にも使われているため、いわゆる「聖地巡礼」的に訪れる人も少なくありません。

まず、博物館入り口の脇には切り出された断面が印象的な巨大な岩山が現れ、そのスケールの大きさを間近に感じることができます。入場料を払って坑内に入ると、目の前に広がるのは、まるで地下とは思えないほど広々とした幻想的な光景。天井も高く、石切場というより神殿のような造りです。所々でライトアップされているので、ロマンチックな雰囲気も楽しめます。坑内は夏でも気温が低く、ワインの貯蔵庫としても使われているとか。演奏会などでも使われることもあり、いろいろな楽しみ方ができる地下施設です。

なお、地下坑内は気温が一気に下がるので、服装に注意をしてください。

大谷資料館

住所 栃木県宇都宮市大谷町909
電話 028-652-1232
URL http://www.oya909.co.jp/

日本の建築文化を支えた大谷石の魅力を深く知る旅へ

独特の風合いと軽さ、耐火性で多くの建築家を魅了した大谷石。もし大谷石がなかったら、日本の建築はここまで成長を遂げなかったかもしれません。その大谷石と、大谷石の歴史を学べる大谷資料館について紹介いたしました。

ぜひご家族や友人と一緒に訪れて、大谷石の魅力と地下空間の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

※2019年9月現在の情報です