和紙のふるさと小川町で伝統の技術を体感する

ユネスコ無形文化遺産に選ばれた「細川紙」とは?

約1300年前から和紙作りが行われていた小川町。江戸時代の初めごろに和歌山県高野山の細川集落で作られていた細川紙(ほそかわし)が伝わり、江戸の庶民が使う大福帳などの生活必需品を作るようになりました。現在も埼玉県の多くの県立高校で小川和紙を使った卒業証書が授与されているそうで、地域の人々の日常に根差しながら受け継がれてきた文化であることがうかがえます。

細川紙は、国産の楮(こうぞ)だけを原料にし、流し漉き(ながしすき)と呼ばれる伝統技法によって作られるのが特徴。冷水にトロロアオイの根から出る粘液を加えた「ネリ」と楮の繊維を混ぜ、大きな水槽(漉き舟)に漉き桁(すきげた)を漬け、上下左右に揺すりながら紙を漉く方法です。楮の長い繊維が流し漉きによって複雑に絡み合うため、細川紙は耐久性に優れています。

埼玉県小川町・東秩父村の細川紙は2014年、島根県浜田市の石州半紙、岐阜県美濃市の本美濃紙と共に、「和紙:日本の手漉和紙技術」としてユネスコの無形文化遺産に選ばれました。

紙漉き体験もできる「小川町和紙体験学習センター」

最近、国内での楮の生産量が少なくなったため、和紙メーカーによってはフィリピンやタイ、パラグアイなどから安い原材料を輸入するケースもあります。また、細川紙のように国産の楮しか使わない場合でも、他の土地で栽培された楮を使うケースも少なくありません。

しかし小川町和紙体験学習センターでは、小川町で作られた楮だけを用い、旧埼玉県製紙工業試験場で使われていた機材を使用して、紙漉きを体験することができます。

体験コースは「入門コース」と「本格体験コース」の2種類。入門コースでは楮100%の紙、または楮にパルプを混ぜた紙でハガキを作ります。本格体験コースには1日コースと4日間コースがあり、1日コースでは楮の黒皮を取り除く「カズヒキ作業」も体験可能。4日間コースでは、楮の表皮をむき乾燥させる「カズムキ作業」から紙漉きまで、一連の工程を体験することができます。

4日間コースは10名限定で、2週間前までの予約が必要。他のコースも1週間までの連絡が必要なので、予約は早めにしておきましょう。

小川町和紙体験学習センター

URL http://www.town.ogawa.saitama.jp/0000001515.html

イベントも開催。「埼玉伝統工芸会館」で伝統技術を知る

埼玉伝統工芸会館では、埼玉県指定の伝統工芸品(20産地30品目)を鑑賞できるだけでなく、制作実演や体験、物産館でのお土産購入も楽しめる施設です。

他の伝統工芸品は週末を中心に制作実演や体験が行われていますが、和紙は「和紙工房」において定休日以外毎日、製作実演が行われ、体験もできます。10人未満ならば予約不要なため、気軽に和紙漉き体験でき人気です。

ここでは、流し漉き以外に、溜め漉き(ためすき)と呼ばれる手法も体験可能です。溜め漉きは、金網が張られた小型の漉き桁を漉き舟から取り出して軽く揺すった後に水を抜きながら紙の厚さを調節する漉き方で、花や葉を漉き込んでデザインを工夫できるのが特徴です。

小川町では、無形文化遺産の登録日である11月27日を「小川和紙の日」と定め、毎年その時期に「小川和紙フェステイバル」を開催しています。この日は埼玉伝統工芸会館の入館料は無料になります。

埼玉伝統工芸会館

URL https://www.saitamacraft.com/

和紙以外にも見どころいっぱいの小川町

「武蔵の小京都」と呼ばれる小川町には、和紙の工房以外にも、酒蔵や絹織物、建具など、今も伝統産業が多く残されています。また、東京の深川めしと共に「日本五大名飯」の1つに選ばれた「忠七めし」を食べることができる山岡鉄舟ゆかりの割烹旅館「二葉」、作家の田山花袋が訪れたこともある「女郎うなぎ福助」など、有名なグルメスポットも点在しています。

東京からは電車で約70分と近距離にある小川町。今度の週末にでも、和紙作り体験をしに訪れてみてはいかがですか。

※2019年12月現在の情報です