【川越城】東日本に唯一現存する「本丸御殿」とは? その秘密を探る

日本で2つしか現存しない「本丸御殿」がある川越城

古い町並みが残る「小江戸」川越。土蔵や商家などが立ち並び、訪れる人々を楽しませてくれます。その川越の歴史を語る上で欠かせないのが「川越城」です。2006年に「日本100名城」の一つに選ばれています。

室町時代にこの地を治めていた一族である扇谷上杉氏がライバル勢力だった足利家に対抗するために築城した川越城。1457年に完成しました。しかし、1537年に北条氏綱(うじつな)によって占拠。1546年に扇谷上杉家はかつての敵の足利家などと連合を組んで、川越城を包囲します。しかし、北条氏康(うじやす)の奇襲によって総崩れとなり、北条家による川越城の支配が確立されました。

その後、豊臣秀吉の小田原征伐の際に、前田利家(としいえ)の攻撃を受けて落城。徳川家康が関東に配置換えになった時に、川越も家康の領地となりました。現在名残を見ることができる川越城の縄張りを築いたのは、扇谷上杉持朝(おおぎがやつ・うえすぎ・もちとも)の家臣、太田質正(ただまさ)・太田道灌(どうかん)親子。太田道灌は築城の名人として知られ、江戸城も設計した人物です。以後、徳川家の重臣が城主を務め、天草の乱を鎮圧した松平信綱(のぶつな)や5代将軍綱吉の側近だった柳沢吉保(よしやす)などもこの地を治めました。

戦国時代から江戸時代まで、軍事と政治の要所だった川越城。歴史好きな方には外すことのできない名所です。

本丸御殿の見どころ

川越城の「本丸御殿」に関する記録は、国立歴史民俗博物館が所蔵している「江戸図屏風」に描かれている様子がもっとも古いもの。その屏風には、高い城壁に囲まれた川越城の一番奥に本丸御殿の姿が描かれています。腕に鷹をとまらせた鷹匠も描かれていることから、本丸御殿は3代将軍家光が鷹狩りの際に休憩所として利用した「御成御殿(おなりごてん)」だったのではないかと考えられています。

家光以降の将軍は川越城を利用しなくなったため本丸御殿は取り壊され、更地のままの状態が続きました。しかし、1846年に藩主の住居だった二の丸が火災により焼失。その2年後に藩主の松平斉典(なりつね)が空き地だった本丸御殿の場所に新しく御殿を建設しました。それが今残っている本丸御殿です。当時の広さは1025坪(約3400㎡)で、16棟の建物を有していました。

明治維新以降、川越城は少しずつ縮小されましたが、現在も大広間、移築復元された家老詰所、および玄関が現存しており、埼玉県の重要文化財に指定されています。日本で本丸御殿の大広間が現存しているのは川越城と高知城だけであり、非常に貴重な文化遺産として保存されています。

周辺に残る城の遺構を辿る

現在の川越城は最盛期に比べるとかなり縮小されていますが、本丸御殿以外にも様々な遺構を見つけることができます。

本丸御殿のすぐ隣にある三芳野神社はもともとこの地に鎮座していた神社で、川越城を築城した太田親子が築城の際に「天神曲輪」と呼ばれる現在の位置に移築。以後、歴代の城主や領民から信仰されてきました。境内には天神曲輪の一部が今も残されています。また、三芳野神社は童謡「とおりゃんせ」の発祥の地と言われています。

現在は市街地となっている場所にも遺構を見つけることができます。川越市役所前はかつて「西大手門」があった場所。そこから西に徒歩数分の場所にある「中ノ門堀跡」は松平信綱の大改修の際に作られた3つの堀のうちの一つで、写真のように一部が保存されています。

また、二の廓があった場所には川越市立博物館が建っていますが、その敷地内には川越城の七不思議のひとつ「霧吹きの井戸」があります。敵が攻めてきた時に井戸の蓋を開けると、霧が吹き出て城を隠してくれたという言い伝えによるものです。このため、川越城は「霧吹き城」という名前でも呼ばれていました。

関東の重要拠点だった、川越城

築城の名人、太田道灌が手がけた川越城。戦国時代が終わり江戸の世になっても関東の要所として存在感を示した名城らしく、城主や領民から信仰を集めた三芳野神社や、川越城七不思議の井戸、中ノ門堀など、往時をしのばせる遺構が今も残されています。

そして何と言っても、日本に2つ、東日本ではここにしか残っていない本丸御殿。この存在は、川越の歴史だけでなく日本における城郭の歴史を知る上でも決して見逃すことはできません。

本丸御殿の堂々たる佇まいに触れ、武士の時代の栄華に想いを馳せてみるのも、ぜひ味わっていただきたい「小江戸」川越の楽しみ方の一つです。

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※2019年9月現在の情報です